小劇場の何とも形容のし難い雰囲気にはまってしまった。密室空間の中で、およそ100名前後の観客と一体化して、時には笑い声や歓声、拍手。役者の一挙手一投足まで目の前の観客に伝わる。
役者も観客の息づかい、表情、囁きあう声が直に伝わってくる(この空間はおそらく味わった者にしかわからないと思われる)。
自分が書いた脚本と演出(それこそライティングや効果音、小道具に至るまで細かい指示を出していた)が、ダイレクトに返ってくる。
自分が思い描いていた通りの反応があったり、予想外(今風で言うなら想定外・・・?)の反応に驚いたり。3回の公演が必ずしも同じ芝居になっていたとは限らなかった。その時の役者のコンディションによって違ったし、その時の観客の反応によって変化したり・・・。
ライブのおもしろさ、怖さの両面を味わうことができた。昨日は絶好調の台詞回しだった役者が、今日はやけに台詞を言い間違ったり、昨日大爆笑だった所が今日は全然受けなかったりして・・・。
先日の日記に書いた通り、第一作目は人気のあった脚本のパクリであったが、徐々に自分の作風と言うものが見え初めてきていた。自分からこんな芝居を書きたいと思えるようになったのである。
小劇場用以前にも、「てんこう劇場」用1本と学祭用に1本の計2本の脚本、演出は既に手がけていたが、やはり小劇場の脚本は特別な思い入れがあった。
劇団も少しずつ変わり始めていった。私以外にも脚本、演出を手がけたいと言う者が現れ始めた。小劇場公演後一ヶ月くらいしかなかったので、大学祭用の作品を彼に委ねた。彼の作風は、私の「唐十郎」に対して「つかこうへい」であった。大学祭での結果は大盛況であった。私は役者として舞台に立ったのであるが、小劇場で感じたものとは異なった快感を得た。
そして、その大学祭での成功で彼も自信を得たようであった。作風も演出法もまったく異にする本書きが、劇団内に二人存在するようになった。
このことが、後に劇団の存亡を招く(そんな大袈裟な・・・)事態に発生しようとは・・・その時は私も気付いていなかった・・・